ここしばらくの間、CAP・Floorについてより詳細に調べたいと思っていた。CAP・Floorは重要でありながらあまりコメントされていなかったからだ。2006年6月以来のFRBによる利上げを控える今、将来の金利に上限あるいは下限をセットするためにデザインされたプロダクトを見ておくことは適切だろう。
ハイライト
・2015年11月に、494件・想定元本530億ドルのトレードがDTCCに報告されているが、我々は実際のグロスの想定元本は780億ドルと見積もっている
・2015年10月がそれまでの6か月間で最高のボリュームだった
・1か月LIBORと3か月LIBORを参照するものが最もよくトレードされている
・各月とも、USドルベースのボリュームの10%から20%がオンSEF取引
・過去6か月間のSEFマーケットにおいては、Traditionがシェア57%でトップだった
・次がBGCで21%、Tullet12%、ICAP9%とつづいている
・EUR、GBP、JPYともに、11月は特筆すべきボリュームとなっている
グラフとデータによる詳細
USドルのCap・Floorについて
まず初めにSDRViewを使って、2015年11月のUSパーソンによる取引を他のUSドルの金利デリバティブと比較してみる
・想定元本530億ドル以上のCap・Floorが取引されている
・Cap・Floorのボリュームの大きさは7番目で、Exoticのすぐ下で、インフレスワップの上となっている。
・494件のトレード
・想定元本の平均は1億7百万ドル
・494件のうち26件、全体の5%が想定元本の報告義務に上限のあるもの(以下上限もの)となっている
・想定元本ベースでは、530億ドルのうち130億ドルで全体の25%となっている
・このことから、実際の想定元本は530億ドルより相当大きいと思われる
Cap・Floor は中央清算されないが、オンSEFかオフSEFかを見てみる
・494件のうち422件がオフSEF取引、72件がオンSEF取引となっている
・想定元本ベースでは、410億ドルがオフSEF、117億ドルがオンSEF
実際のボリューム
ここで、上限ものとそうでない通常のもの(以下通常もの)を区別して、それぞれの想定元本を測定して、実際の想定元本がどれぐらいあるのかを推定する
オフSEFでは、410億ドルのうち83億ドルが上限もの、327億ドルが通常もの、オンSEFでは、117億ドルのうち46億ドルが上限もの、71億ドルが通常ものとなっている
下記のSEF Market Shareから、オンSEFではUSドル建Cap・Floorのトレードボリュームがグロスベースで210億ドルであることが確認できた。このことから、オンSEFの上限もののボリュームはSDR報告ベースより相当大きいことが予想される。オンSEFの上限ものと通常ものの関係が、オフSEFのそれにも当てはまると考えると、実際のオフSEFのグロスのボリュームを見積もることができそうである。
実際の見積もり
・オンSEFのトレードボリュームをトータルで210億ドルにするためには、上限ものを131億ドル程度にする必要があり
・これから上限もののボリュームはSDRに報告されたボリュームの3倍程度と考えられる
・これをオフSEFに当てはめると、上限もののボリューム83億ドルは249億ドルになり、
・通常ものの327億ドルと合計すると576億ドルとなる。
・我々の見積もりでは、オフSEFの実際のトレードボリュームは576億ドルとなり、オンSEF210億ドルと足すと、786億ドルとなる。
・一方でSDR報告されたボリュームは530億ドルとなっている。
ボリュームのトレンド
ここでは過去6か月のグロスのボリュームを見るためにSDRView を見ることにする。
・10月が930億ドル以上と最大のボリュームとなっている
・ほぼ11月の2倍となっている
・通常のボリュームは安定して推移している
・オンSEFのボリュームは20%程度
・件数ベースでは10%程度となっている
プロダクトダイプ
―どのようなタイプのプロダクトがトレードされているか―
・オンSEFでは3か月LIBOR参照、または1か月LIBOR参照、その他SIFMA Muni Swap 1か月参照がいくらかある
・オフSEFでは多岐に渡っており、3か月LIBOR、1か月LIBOR、ISDASwapRate,参照のもの、また若干ではあるが、SIFMA Muni Swap、CMS-ISDAFIX、またはOIS Index参照などがある。
・プロダクトタイプはCapが多くなっている・
・上記は低金利の状況を鑑みれば当然だろう
・次にCollars、Floorsの順である。
―11月のデータからグラフを作成してみる―
まずは1か月LIBOR参照から。
・288件のトレードがオフSEFで行われ、グロスの想定元本が190億ドルとなっている
・うち1件がFloor、想定元本0.27億ドル
・うち6件がCollar、想定元本30億ドル
・うち281件がCap、想定元本160億ドル
・14件のトレードがオンSEFで、想定元本が32億ドル
・うち5件がCollar、想定元本28億ドル
・うち9件がCap、想定元本3.6億ドル
・グロスのプレミアムについては、売り買い同時でネットされているものもあり、全てのトレード毎に測定できるわけではない
・その意味でこのデータは完全に信頼できる情報という事ではない
次に3か月LIBOR参照
・1か月LIBOR参照に比べてFloorが増えていて、またオンSEFも多くなっている。
もう一つISDASwapRate参照のチャートも載せておく
行使価格とテナー
11月にトレードされたものの、行使価格とテナーを確認する
まずは3か月LIBOR参照Capから
・ほとんどのトレードが、特定の行使価格と満期日に集中している
・1件以上成立している行使価格とテナーはほとんどない
・行使価格2.11%、満期日2018年6月30日のトレード件数は8件ある
・行使価格3%、満期日201811月30日のトレード件数は4件ある
・最も長いテナーは5年
CollarsやFloorについては省略する
SEFのマーケットシェア
ここではSEFViewを使って、どのSEFがUSドルのマーケットで最も多くのボリュームをトレードしたかを確認する
・Traditionがシェア最大
・過去6か月間でみるとシェア57%
・BGCがシェア2番で21%
・Tulletは12%
・ICAP9%
・GFIは1%だが、7月以降できていない
11月のオンSEFのボリュームは210億ドルで、過去6か月で最高となっている
EUR、GBP、JPY
最後に他の主要通貨についても簡単に触れておく
・11月のボリュームは前の3か月の3倍程度となっている。通常3通貨の合計額はUSドルよりもはるかに小さいが、当月は逆に大きくなっている
・これはCapFloorのマーケットでは初めてのことだろう
・もっと多くの興味深いデータを確認できるが、それらについては、是非ご自身でSDRViewをお使いいただきご確認いただきたい
最後までお読みいただきありがとうございました。